装備が不十分

 Tシャツとジャージが沢登りにおいて一般的な服装ということを昨日のエントリで述べたが、現役で沢登りをやっている友人に話を聞いたところ、最近はそうでもないという事だった。私が沢登りをやっていたのは10年以上前だが、その頃に比べると速乾性、保温性に優れた素材のウェアがかなり普及しており、価格も求めやすくなっているので、ある程度本格的にやりこむ人はそういう服装を揃えている場合が多い。速乾性素材のTシャツにジャージも許容範囲ではあるが、それで十分かと言われると疑問があるということだ。つまり、比較的簡単な沢に登るのであればTシャツジャージで問題ないが、流れの中を泳いで突破することを前提とするような沢の場合は不安があるということである。

 今回の事件現場の滝川は、「沢登りに慣れている人でなければ、入るのは難しい」レベルであり、さらに増水していたということなので、ガイドが服装を含めた装備に不安を感じたというのは十分に根拠のあることだろう。Tシャツ、ジャージ姿は、沢に入ってそれほど難しくない所まで行くのには十分であるが、墜落事故現場まで遡行するには不十分ということである。

 先ほどのニュースでは、二人の死因は溺死ということだった。結果から見れば、ガイドの判断が正しかったが、それを無視して沢に突入した判断の甘さが遭難死という結果を招いたのだろう。

山岳遭難報道のあり方

 秩父山中で、遭難者を救助に行ったヘリが墜落したが、それを取材に行った日本テレビ記者とカメラマンが遭難死した。

【日テレ取材班遭難】「ちょっと撮ってくる…」 軽装を心配するガイドに言い残し、2人だけで入山 - MSN産経ニュース

 速報記事から一貫して

2人は沢登り用の靴を履き、業務用無線を所持していたものの、服装はTシャツにジャージー姿の軽装だったという。

の様に報道されており、ブコメでも軽装のうかつさを批難する論調が強い。


 だが、夏山登山や沢登りの経験がある人なら分かると思うが、夏山、特に沢登りではTシャツにジャージという姿はごく一般的なものだ。もちろん、長袖の上着や防寒具を持ってきていることは大前提だが、体温調節のために上着を脱いでTシャツになることは何も珍しくないのだ。ただし、速乾性の素材であることが前提ではある。木綿は乾きにくく体温を奪うのでダメだ。


 この件については、カメラマンは山岳取材のベテランとのことなので、一般人のレベルで不適切な服装と考えるべきではない。防寒具等を持っていたかどうかは報道されていないが、彼らの背負っていたザックも見つかったということなので、ザックを持ってきていながら雨具や防寒具が入っていないというのは考えにくい。


 ガイドが装備不足を理由に引き返す判断をしたというのは服装の問題ではなく、ザイルやハーケン、ハーネス等の問題ではないかと私は考えている。あと、沢登りであればヘルメットは必須だと思うが、報道ではそこには触れられていない。ここは詳しい報道を待ちたいが、取材する記者の登山・沢登りに対する知識が不十分だと、情報が正しく伝わらないことが懸念される。


 現在報道されている情報の中で気になっている点は、
・沢を登って現場に向かう途中で、ガイドは装備不十分で危険と判断し引き返した
・沢ではなく尾根を登ると言って、二人はガイドと別れて再度登り始めた
・にもかかわらず、二人の遺体が見つかったのは墜落現場近くの沢
・二人が同じ場所で心肺停止により死亡


の辺りだ。ここから感じた疑問点は、


・二人は尾根を登ると偽って、ガイドが危険だと判断した沢を登ったのだろうか。
・もしくは、尾根伝いに登った後に、その危険箇所を越えてから沢に降りたのだろうか。
・直接の死因は滑落による外傷か、水に浸かっていたことによる低体温症か。
・同じ場所で死んでいたのは何故か。二人同時に意識不明になるような事態が生じたのか。


 いずれにせよ、遭難の原因に状況判断の甘さは少なからずあったと思うが、Tシャツとジャージを強調するのは報道のミスリードだと考えられる。これは、昨今の無謀な計画、不十分な装備が原因による山岳遭難の多発からの短絡思考ではないだろうか。続報では登山知識のある編集者がチェックを入れることを望む。


追記:


朝日新聞のこちらの記事では当初、

asahi.com(朝日新聞社):ヘリ事故現場を取材の日テレ記者ら2人死亡 秩父の山中 - 社会

 県警によると、2人は7月31日午前6時半ごろ、25日に起きた埼玉県の防災ヘリコプター墜落事故の現場を取材するため、ガイドと入山。途中で川の水流が多く、2人が軽装だったため、午前10時ごろにいったん途中の橋まで引き返した。しかし、2人は「山を知っているから」と言い、再び山に向かったという。


という内容だったが、

県警によると、2人が見つかったのは、乗員5人が死亡したヘリ墜落現場から北東に約2キロ離れた沢。7月31日午前6時半ごろ、日本山岳ガイド協会の水野隆信さん(33)と一緒に、秩父市大滝の豆焼橋付近から入山。しかし、沢の水流が多く、2人はTシャツにジャージー姿と軽装だったため、ガイドの判断で豆焼橋に引き返したという。

 その後、午前10時ごろになって、2人は「黒岩尾根(登山道)を歩いたことがあるので、そちらを撮影してくる」とガイドを残して再び山に入ったという。


に修正されているようだ。前者と後者では、かなりニュアンスが違う。ところで、「軽装だった」がTシャツとジャージ姿を指しているのは確かなことなのだろうか。


追記2(8/2 7:10):

NHKニュースのガイドの記者会見より
・前日、出発前に装備を確認。装備不足で最初から不安があった。
・最初から途中で引き返すつもりだったが、実際に沢に降りて水の冷たさを体感してもらい、途中で予定通り引き返した。
・引き返した後、はっきりと行くとは聞いていないが、「尾根の方を見てみたい」のように言っていた気がする。
尾根の方であれば、一般ルートなので不安は感じなかった。


以上から、装備不足だったのは「沢登りの装備」であると推測される。
 カメラマンは山岳経験が豊富であったそうだが、縦走がメインで沢登りについてはそれほど経験が無かったのだろうか。

 また、
・二人は同じ滝壺に下半身が浸かるような形で亡くなっていた。
・一人は頭に外傷あり、一人は目立った外傷無し。

という情報もあった。


こちらには山岳専門家のコメントも

埼玉・秩父の日テレ記者遭難死:「判断が甘かった」条件付け取材許可 - 毎日jp(毎日新聞)

 今回の遭難事故について、現場の滝川を10回以上訪れたことがあるという埼玉県秩父市の山岳写真家、新井靖雄さん(63)は「沢登りに慣れている人でなければ、入るのは難しい」と指摘する。

 新井さんによると、付近はV字の深い谷で湿度も高く、コケや水でぬれて足場が悪い。夏でも気温15度、水温10度以下になることもある。自らが現場に入る際は、沢専用の靴や手袋、ウエットスーツ、ヘルメットを準備。食糧などを含め、荷物は日帰りでも15キロ程度になるという。

 また、埼玉県山岳連盟の天野賢一理事長(46)によると、今年は沢の水量も多かった。「沢では服がぬれることが多い。ぬれた服で夜に気温が下がると、体温が下がり危険。体温が下がらないような装備が必要で、Tシャツでは軽装過ぎる」と話した。

 服装はウェットスーツであるのが望ましいが、少なくとも水に浸かることは意識した服装であることが必要。記者らのTシャツの素材や上着や防寒具の有無については触れられていないが、基本的に縦走用の装備であり沢用の装備ではなかったのではないだろうか。

「のぞみウィッチィズ」と「ガラスの仮面」

 重いネタの後は軽めのネタを。

Twitter / 小野 美由紀: 司馬遼太郎系男子の特徴…1.やたら「志」という言葉を ...

で、「司馬遼太郎系男子」というネタに乗っかって「司葉遼太郎系男子」というネタでブコメを書いてみた。ネタ元は昔ヤングジャンプに連載していた「のぞみウィッチィズ」という漫画の主人公だ。
最初は演劇がテーマの学園ラブコメだったのだが、すぐにボクシング漫画になってしまった。演劇パートはいわば「ドカベン」の柔道編みたいなものだ。

 つい懐かしくなって、漫画を取り出して1巻から読み返してみた。すると、ヒロイン江川望の演劇シーンに妙に既視感がある。あれ、これってほとんどが「ガラスの仮面」のエピソードにそっくり…… インスパイアされたのかな〜、まあ本題はボクシングだから気にするのはやめよう。

 思ったほど軽いネタじゃなかったかも;

一日で掌を返すようですが

 昨日はホメオパシーで落語という思いつき(というか駄洒落)でエントリを書いてしまった。その後色々と考えてみた結果、あまりよろしくないと思うようになった。

 まず相手を選ぶネタであること。落語に採り上げるということは、基本的には虚仮にして笑いを取ることになる。ホメオパシーを信じている人は、当然気分が悪いだろう。また、ホメオパシーの害を強く認識している人にとっても、笑い事ではないという気持ちがあると思う。さらにホメオパシーに興味のない一般の人は、別に面白くもない。これで笑えるのは、中途半端にホメオパシーを叩いている人だけだ。そしてこんなネタを思いつく私は、当然この中途半端な人に分類される。

 ネット上、特にはてブのコメント等では、批判対象を皮肉っていかに上手いことを言うかを競う風潮がある。大喜利と皮肉られる所以だ。正面から真面目に批判するのではなく、斜めから皮肉って笑い物にする。皮肉られた側は腹立たしいだろう。真剣な批判であれば、受け止めて自分を省みることもあるかもしれないが、虚仮にされても冷静に受け止められる人はほとんど居ないだろう。ネット上でトンデモ(と一部から評価される)発言を繰り返す人が居るのは、本人にも問題はあるにせよ、これらの皮肉コメントによる悪循環もあるのではないだろうか。

 私の過去のブコメを読んだ方は、「お前はどの口でそんなことを言うんだ」と思われるかもしれまない。ええ、その通りです。これは大喜利のネタコメントを書きまくった私の自虐です。

 大喜利はてブの楽しみ方の一つではあるのだが、ふざけて良い場合とふざけるべきではない場合を意識していこうと思う。

数値化が全てではないが / twitterならではのネットコミュニケーション

404 Blog Not Found:Math - 比較に数値は必要か?

 このエントリを読み、私はまず

『「体重をしられたくない」「天秤はあるが体重計は無い」のような特別な事情が無い限りは天秤を使う利点はない。/必要も無いのに天秤を使うのは懐古主義者だけ。』
というようなブコメをつけた。*1タイトルにひきずられた部分が多かったのだが、この考え方がまさにdankogaiが指摘しているところなのであろう。

 多くの場合は大は小を兼ねる。ここで言う大が体重計(計量秤)、小が天秤である。最初のブコメに書いたように、多くの場合は計量秤で数値化した方が汎用性がある。数値化するデメリットがなければ、数値化を否定する必要は無い。数値化できない物だけ天秤で比較すれば良いのだ。一般的にはこれが実用的な考え方だと思う。数値化以外の方法を全く忘れてしまうようでは問題があるが、過大に評価するのも懐古主義に過ぎない。バランスが重要。そして私にとってのバランスの位置は、やはり「必要な時だけ使う」で良いと思う。

 ただし、「綺麗の価値に、値段なんて付けられない。」「値段をつけなきゃ、比べられない。」に対して上の論理をそのままあてはめられるかというと、単純にはいかない。体重が重さという共通単位で計量できるのに対し、綺麗を量る単位は一意には決められず、値段というのは尺度の一つでしかなく、しかも値段をつける場合には綺麗さ以外に希少性や扱いやすさなどの要素も加わってくるので、綺麗さを値段で量ることは必ずしも適切とは考えられない。


ところで

masahirok_jp「綺麗の価値に、値段なんて付けられない。」
に対する
GkEc「値段をつけなきゃ、比べられない。」
という返事の時点で、意識にズレがあるように思う。

「綺麗の価値に、値段なんて付けられない。」から私は
・綺麗の価値は数値化できない
・綺麗の価値を数値化できるとしても、自分はしたくない
・綺麗の価値を数値化できるとしても、お金で量るのはイヤ

等の意図を感じた。それに対して「値段をつけなきゃ、比べられない。」は、比較することが前提になっており、しかも比較基準を値段に限定している。この時点でズレが生じている。

それに対して
dankogai「んなことない。a,bの値がなくともa*2

 さらに遡ると、どうやら「綺麗の価値に、値段なんて付けられない。」は
moni_a:「@mrkmita に教えてもらったLUSHの危機一髪ぐぐった。1〜2回分で1,880円。私の髪だとたぶん1回分。これを高いと見るか安いと見るか。美容院のトリートメントと比べたらたしかに安いけど、美容系ブログで1回2千円なんて安い!というコメを見て、女子はすごいと思ったところ。」
への反応だったらしい。この時点で、私の「綺麗の価値に、値段なんて付けられない。」の分析も全く的外れであったわけだ。

 こういう、発言者の意図に関係無く言葉が一人歩きして展開していき、それを是とするところがtwitterらしいコミュニケーションと言えるかも知れない。これを素直に認められないのは、私の頭が固いからなのだろうか。

*1:その後エントリやTLを読み直して、現在のブコメに書き換えた。

*2:まあ、そのdankogaiのエントリに対して、最初のブコメのようなコメントを付ける私が言える話でもないのだが。

ボルダリングはじめました

PGのためのボルダリングのススメ - せうかつ

に刺激されて、ボルダリングを始めた。近くにあったジムが、本店は車で40〜50分くらいの距離なのだが、支店が徒歩10分と非常に地の利に恵まれている。


 今日初めて行ってきたのだが、実は現在握力がほとんど無いへろへろな状態だ。字で表すと

ゆ  び  に  ち  か  ら  が  は  い  り  ま  せ  ん

ぐらいの感じだ。


 急に始めた理由は、上記のエントリに非常に興味を惹かれたためだが、たぶん最後に背中を押したのは一番下の写真なのだと思う。今の自分はダイエット用品に簡単にひっかかりそうで、我ながら心配である。そういえば先日も、楽天の広告メールの痩せる下着を見て20分くらい迷ってたよなぁ……

追記:
って嘘写真だった! そりゃ見るからに別人だもんなぁ(苦笑)


小山田大 DVDでボルダリング

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