キリストの墓に行ってきた

 青森県新郷村(旧戸来村)にはキリストの墓という物がある。トンデモ系の中ではそれなりに有名かもしれない。説明書きによれば

「昭和10年、茨城県の磯原市(現北茨城市)から訪れた武内巨麿氏により、武内家の古文書をもとに発見されました。」
「古文書によると、ゴルゴダの丘磔刑に処されたのは弟のイスキリであり、キリスト本人は日本に渡り、ここ新郷で106才の天寿を全うしたというのです。向かって右側がキリストの墓“十来塚”、向かって左側が弟イスキリの墓“十代墓”と言われており、毎年キリスト祭では慰霊祭が行われ、ナニャドヤラの唄と踊りが奉納されます。」

 地元の人も全く知らなかったことが、茨城県の宗教家の家の古文書に残っていたというのが驚きですね。キリストの死後から伝えられてきたとしたら、その古文書は古事記日本書紀よりも古い?

 ついでに同じ村の山中に、大石神ピラミッドという物もあります。同じく武内家の文庫に秘蔵された神代史によると、「わが国にはエジプトのピラミッドよりなお古い数万年前のピラミッドが7基ある」ということで、同じく昭和10年に戸来村を訪れた日本画家の鳥谷幡山も大石神を見て「これで4個目だ」と喜んだそうだ。

 どちらの話も、どこがおかしいというか、むしろ一つでも確かな根拠はあるのか? というような話である。

 半村良の「戦士の岬」という小説は、主人公達がキリシタン埋蔵金伝説をでっち上げたら本当に金が出てきてしまった。という話であったが、「黄金伝説」でもこの辺りが舞台になっていたこともあるし、案外これらも元ネタの1つだったりするのかもしれない。

 今となっては誰も信じていない話なので、ニセ科学(史学)といっても罪のない笑い話と言えるが、トンデモ系史跡としてはある意味で典型的な例かも知れない



写真1:キリストの墓の説明文

写真2:キリストの墓 この対面に弟イスキリの墓がある

写真3:大石神ピラミッドの太陽石