「ホメオパシー In Japan」読了

 2ヶ月くらい前に薦められた本だが、ようやく読み終わった。正確にはだいぶ前に読み終わっていたのだが、最近仕事が体力的にきつくてまとめる気力が出なかった。

 感想を一言で言うと、著者である由井寅子の言にまったく説得力を感じない。これ一冊でホメオパシーを判断することは出来ないと思うが、少なくとも由井寅子に対しての評価は低いとしか言いようがない。

 私の価値観としては、「相手のことをよく分からなければ批判はできない」ということがあり、ホメオパシーに対する批判は控えてきたが、この本において著者は医療を十分に知りもしないで批判している。この著者はホメオパシーの専門家ではあるが、略歴を見る限り(そして本書の内容を見る限り)医療も科学も本格的に勉強したことはないようだ。自身の経験から医療に失望し、かわりにホメオパシーには盲信していることが感じられる。

 本書は「医療に失望している人」「代わりに何かにすがりたい人」にとっては説得力があるかもしれないが、もともとホメオパシーを信じようという気が無い人にとっては全く説得力を持たない。そういう意味では、文字通り「入門書」なのだろう。

 結局、私が求めていた「超微量の法則」に対する説得力のある説明は、本書には無かった。一応説明らしいものとしては、1988年にネイチャー誌に発表された論文についての記述で、

 ベンベニスト博士は、アレルギー物質を希釈しその量を少なくしていくと、ある段階までは勿論アレルギー反応も小さくなるのですが、ある段階になると逆転して反応が大きくなりはじめ、あるピークを境にまた反応が小さくなっていくという現象を発見しました。どこまで希釈してもその繰り返しで反応がなくなることはありません。

少なくとも私の知る限りでは、この実験の追試に成功したという話は聞き及んでいないのだが、

 魔女狩り状態だった発表当時とは変わり、10年経った現在、世界的に権威のある研究所や科学者が彼の研究を支持しています。近い将来ノーベル賞を受賞するだろうとも言われています。

ということであれば、1988年のネイチャー誌以外にも著名な論文誌に掲載された例が幾つもありそうなものだが、なぜ例を挙げないのだろうか。

 また、超微量まで希釈した場合でも反応があるという話だけであったのに、別の項では

その作用を持たせる為には希釈するだけではなく、希釈した水を振盪する(叩く)ことが必要です。

とある。これだけでも実験の意味合いはかなり変わってくる。希釈の度合いだけではなく、同じ希釈レベルで振盪の有無によって反応が異なるというデータがあるのだろうか?

 さらに

 経験的にポーテンシーを高めれば高めるほど、レメディーは肉体から心や感情へと作用していくことが知られています。

ポーテンシーとは希釈震盪の程度のことだそうだが、ということは、やはり肉体的なアレルギー反応は希釈するほど弱くなるのでは?


 上記のように、記述の厳密性に著しく欠ける部分が多い。自分たちの中では筋が通っているのかも知れないが、全く他人を説得できるレベルではない。

 以上により、本書は失望させられる内容でしかなかった。もっとも、これでは著者の個人的資質による所が大きすぎて、ホメオパシーの是非を問うところまでも達していないのだが。