宮部みゆき『模倣犯』

友人に勧められていた宮部みゆき模倣犯を読み終わった。

模倣犯1 (新潮文庫)

模倣犯1 (新潮文庫)

模倣犯2 (新潮文庫)

模倣犯2 (新潮文庫)

模倣犯3 (新潮文庫)

模倣犯3 (新潮文庫)

模倣犯(四) (新潮文庫)

模倣犯(四) (新潮文庫)

模倣犯(五) (新潮文庫)

模倣犯(五) (新潮文庫)

とりあえず、長かった。ひたすら長かった。
しかし、なかなか読み応えはあった。

特筆すべきは、やはり第2部のヒロミやカズの視点による話。あの部分だけで一本の小説になるぐらいのボリュームがあった。そのために推理小説としては間延びしてしまい、作品全体としては長く成りすぎたという感がある。しかし、やはりあの部分こそがこの作品の肝であり、欠いてしまえば平凡な作品に堕してしまっただろう。

前半では完全に警察や世間を翻弄して完全犯罪とも思えたが、後半に入ると次々にボロが出てきた。最終的には挑発に乗せられたピースが尻尾を出した形になったが、それがなかったとしても「建築家」の推理や、出てきてしまったヒロミの携帯電話(実際に捜査の証拠品になったという記述は無かったと思うが)などで、いずれは犯人を特定できただろう。

当初は天性の才能と知性に優れたピースが勝利するかに見えたが、やがて人間としての薄さ、幼児性を露呈し、逆に市井の豆腐屋のおやじである有馬義男の人間的な厚さと成熟が見えた。

ところで、タイトルの『模倣犯』というキーワードは、本当に最後の最後までまともに出てこないし、作品の中身を表しているわけでもないのだが、本当に『模倣犯』がタイトルでいいのだろうか。